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ヒントは自然と音楽から。自分の好きを極める会社探し

人生でそう何度もある訳ではない、就職活動。志望する複数の会社から内定を得たら、あなたならどんな基準で選択をしますか?

自分の力を最大限に、そして持続的に発揮できる場所はどこか。「自分の好きを極めること」と会社との接点を徹底的に探り、思考し、就職先を決めたという栗原豪平さんに、当時のお話を伺いました。

栗原 豪平|Gohei Kurihara
2018年森ビル新卒入社。大学では建築学を専攻し、農村計画の研究を通して街や地域のブランディングに興味を持つ。入社後は管理事業部に所属し、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに導入予定の新技術の検討など、施設管理における新たな提案や企画に携わる。2023年7月、タウンマネジメント事業部に異動。六本木ヒルズの運営を担う。



さまざまな経験が、街のブランディングへの興味につながった

昔から好奇心旺盛で、色々なことに興味を持ち、触れることが好きでした。農林水産業やコミュニティ形成、カルチャーに興味を持つようになったのも、幼少期の経験からきていると思います。
 
生まれ育ったのは、都会と農村の間にある埼玉県のとある地域。農家と米屋を代々営んでいた家だったので、田んぼの一部に家があるような、自然豊かな環境で兄弟と遊んでいました。地域では「米屋の栗原さん」で通っていて、お米を買いに来た地域の人たちが集まる、憩いの場になっていました。
 
父の代になると、農家をやめてCDやレコードのレンタルショップをはじめました。自然の中で遊ぶことは相変わらず好きでしたが、父の影響で音楽やカルチャーにも興味を持ち、自分でもギターを演奏するほど好きになっていきました。

「昔から、夏休みの宿題も1回も出したことがないくらい、おしつけられることが嫌な性格だったんです。それよりも『好き』を極めていく方へ全力を注いでいました」

街づくりに興味を持つようになったのは、大学生になってからです。東京の大学で建築学を専攻していたこともあり、渋谷や原宿など、いろいろな街を見にいきました。なかでも面白いと思った街が下北沢です。古着屋やライブハウス、劇場が多いことで知られ、古着が好きな人、音楽が好きな人、演劇が好きな人たちが集まり、その人たちに向けたユニークなお店が新しく生まれていく。そんなお店と人の集合体が、下北沢にしかない個性的な色を放っていたんです。
 
トップダウン的に再開発されたのではなく、街の人たちがボトムアップしてきた結果「そこに行かないと体験できない街」になっている。僕はそんな街が好きだと思ったし、そんな街づくりができたら楽しそうだなと考えるうちに、これまで別々にあった興味のかけらが少しずつ繋がりはじめました。
 
大学・大学院の研究室で「林業地域における木材利用とまちづくり」をテーマに設定したのも、個人的な趣味が出発点にありました。というのも、演奏するだけでなく、エレキギターなど、楽器のギアとしての魅力にハマり、そこから楽器の素材である木材そのものもすごく好きになってしまって。好きになると感度も高くなるもので、山形県の最上郡にある金山町の林業の取り組みの情報が耳に入り、強い興味を持つようになったんです。

金山杉
金山町の街並み。在来工法で建てられた、白壁と切り妻屋根の伝統的な形の住宅が並ぶ。実際に金山町で育った木材や伝統的な材料を使い、気候風土にあった建物になるかといった検証をしながら、街並みをつくる活動が行われていた

金山町の木材は品質がよく、僕自身、実際にその木材に触れた時は、剛性といった物理的特性はもちろん、意匠としてその木目も美しく、とても感動しました。そして金山町では、そんな高品質の木材を生産するだけでなく、林業に携わる人たちがコミュニティの中心となって、ブランディング活動を行っていたんです。
 
品質の高い木材を使って、住民が住む住居をつくる。それが連なって美しい街並みが生まれ、街そのものがショールームとなっていく。行政は主導するのではなく、あくまで後押しする立場なんだそうです。
 
こうした取り組みの結果、金山町の木材は1本で高級車1台が買えてしまうほどのブランド木材として知られていきました。そして街が潤うことでさらに活動が続いていく…。一次産業で生まれた素材を起点に、建築、地域、街並みに活動の範囲を広げるブランディングの手法に、面白さを感じました。

学部・修士の研究を通じて、地域木材のブランディングと地産地消が生む資源流通や地域内外ビジネス、さらには建築・景観作りの観点からその特徴と今後の展望を明らかにした

<出典>「山形県金山町における地域材を活用した「金山住宅」の変遷と持続性」農村計画学会誌, 2019, https://doi.org/10.2750/arp.38.230

右に倣えではない、自己実現ができる場所を探していた

就職活動でも、街や地域のブランディングに携わることができる会社を中心に、鉄道の街づくり部門や広告代理店のマーケディング部門を受けていました。森ビルを受けた理由は、東京の一エリアの個性を引き立たせ、価値を最大化していったという、街のブランディングの実績に惹かれたからです。
 
とはいえ、当時もっとも志望度が高かったのは、ある広告代理店。最終的に森ビルとその会社に内定をもらいましたが、真剣に悩んだのはそこからでした。というのも、先に内定が出ていた森ビルのことを知れば知るほど、興味が湧いてきたからです。

森ビルの社員と話していると、どういう街をつくり、どう良くしていきたいのかという想いをそれぞれがバラバラに持ちながら、だけど一つの船に乗っている感じがするなと思いました。街づくりへのビジョンが明確だから、集う人が個性的であっても、結束し、信念を軸にひとつのものをつくろうとしている。一方で広告代理店は、クライアントの意向を汲みながら、その場その場で全力を出し、最適解を出していくことが求められるのだと感じました。

ディベロッパーはモノ・コトづくりに主体として関わり、広告代理店はコンサルとして関わる。経営層の体質も含め、同じ「ものづくり」「ブランディング」に携わる仕事といっても、関わり方に大きな違いがあると気づきました。
 
はたして、そのまま広告代理店へ行っていいのか。その会社で40年働くことになるかもしれないと考えた時、待遇がいいことや、きらびやかなイメージは決め手になりませんでした。僕にとって大事なのは、そこで自己実現ができるかということ。つまり、好きなモノやコト、面白いと感じるものを落とし込んだものづくりができるかどうか。そして好奇心が旺盛で、かつそれらをとことん極め、追及する自分の性格が合う環境かどうか。
 
森ビルには、好きを極めている人が他にもたくさんいます。その人たちと一緒に、さらに自分のキャパシティ以上のものをつくることができたらおもしろいなと思って、森ビルへの入社を決めました。

森ビルに入社して今年で6年目。つい最近まで、安全・安心のための管理・運営を担う管理事業部の管理企画という部署で、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーを担当し、新しいアイデアを出し、実現に向けて動いていました。
 
そのプロセスはなかなか地道なもので、世の中にどういう技術があるのか知るために展示会に行ったり、社内で抱えているソリューションを見つけに行ったりするところから始まります。そこで、たとえば「こういうセンシングカメラがあれば、安全安心を守りながら、現場に立つ人を減らせる」という提案をしたとする。それを実現するためには、主体的に動き、いろいろな部署を巻き込む必要もあるので、根回しや人との信頼関係を築くことも大切になってきます。また、僕の場合は理系の強みを活かして、データ分析や費用対効果を数字化することで、より説得力を持たせるようにしていました。管理企画は守りと攻めの両方をやる立場。計画や設計の部隊にも、必要な意見を言うようにしてきました。
 
そして今年の7月、タウンマネジメント事業部に異動しました。まだ入ったばかりですが、これまでの経験を活かし、六本木ヒルズに20年にわたって蓄積されてきたデータを元に定量的な数値を説得材料として導き出して、より自由度の高い提案ができないかと考えています。

別々にあるものをつなげ、新しい価値を生み出す

いつか実現したいのは、環境を保全し、共生しながら、大規模な開発をしていくことです。たとえば、二子玉川の再開発の場合は、多摩川もあり、元々は働く街じゃなかったけれど、オフィスビルや商業施設、住宅などを建てて、大きな企業を誘致しました。その結果、多摩川という青臭い草のにおいや土のにおいがする、豊かな自然のポテンシャルも引き立たった。仕事をする場所と自然という、相対する要素を持ってきたことで、自然と共生しながら住む・働く・生きるができる街を実現したんです。こうやって相対するものを組み合わせて、そこから新しい価値を産んでいくような、そんな全く新しい街の姿を描いています。

一方でプライベートでも自分の好きを追求していくことは欠かしません。今は森ビルや社外メンバー10人ぐらいとやっている音楽クラブや釣り部に所属していて、ミュージックバーに足を運ぶことも多いです。自宅ではハウスやテクノの音楽をつくる日々。特に面白いのがセッションで、全く違うジャンルの音楽が掛け合わさることで、自分ひとりでは発想できなかった新しいサウンドやグルーヴが生まれるんです。そういったプライベートの活動から得られる、偶発性の出会いや野性もすごく大切にしています。
 
実は入社前、「森ビルは街の文化を育てるという観点があるからこそ、カルチャーを担う人を育てることができてもいいんじゃないか?」という想いを書いたことがあります。芸能人や文化人、音楽家、芸術家を育て、成長を後押しする体制を森ビルがつくることができたら、より街にカルチャーが香るようになるかもしれない。そのために何ができるのかは、今も考えているところです。
 
そこから派生して、ハイカルチャーな既存の街づくりに対し、サブカルチャーな街づくりの要素も織り交ぜていくとか、音楽であれば、コンサートホールで演奏されるものだけでなく、路上で演奏される音楽、スナックで歌唱される音楽なども混在させ、それが街の魅力につながるような仕掛けも考えてみたいです。あとは、音楽の部署をつくることも野望のひとつ。常設的に音楽に触れ合える場所として提供するだけでなく、アートナイトでアートが街中に飛び出すように、音楽が街中に飛び出して路上で演奏できるようにするにはどうすればいいか、それを実現するには部署も必要ではないかと思うんです。そんなことも、今後挑戦してみたいと思っています。
 
僕にとってブランディングは、価値を最大化し、情報の伝達すること。それを実践していきたいと考えた時に、森ビルという環境は最適で、仕事をしていても個人では成し遂げられない規模でありながら、自分の脳みそを投影できていると感じます。たとえ僕のように末端の人間であっても、その考えが実際に街に投じられ、大きなインパクトを与えられる。そんな環境で、これからも興味を追求しながら夢を実現していきたいです。


栗原さんの「未来を創る必須アイテム」

自宅のデスク
好きなものに囲まれて、新しい音楽を生み出す場所。音楽クラブへ通うようになってから、さまざまな音楽ジャンルのプレーヤーとセッションするようになり、そこで受けた刺激をここでアウトプットしています。

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