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僕が感じるヒルズの街のワクワク感を「共有」したい

子どもの頃、未来の世界を想像したことがある人も多いだろう。想像していた通りの世界は来ていないかもしれないけれど、その未来に近づくような技術や考え方に触れたとき、人はワクワクするのだと思う。そしてその感動は、仲間と共有できたときにより輝いて見えるはず。

現在「ヒルズアプリ」の開発を担当する山本純也さんは、最新のテクノロジーを駆使して街の体験をデザインし、未来へのワクワク感をつくりだしています。

「スマートフォン」の衝撃

僕がまだ高校生だった頃、iPhoneが日本にやってきました。当時の僕らにはまだ「スマートフォン」という概念に馴染みがなく、折り畳み式のガラケーで簡単なインターネットゲームをしたり、友人と赤外線で連絡先を交換していたような時代。発表されたスマートフォンの広大なタッチ画面には想像もしなかったような機能を持った様々なアプリのアイコンが並んでいて、わかりやすく「想像していた未来が近づいた」と興奮したのを覚えています。

興奮冷めやらぬうちに、他の友人よりも一早くiPhoneを手に入れることができ、様々なアプリをインストールして遊びました。友人には「このアイテムは『物珍しい』だけではなく『生活の過ごし方を変えるものだ』」と吹聴して周った結果、「面白そうだから」とみな次々に機種変更していきました。自分のポジティブな体験を他人に共有したことで、輪が拡がった。何気ない学生の日常ですが、このときの興奮をとてもはっきりと覚えています。

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その体験が活きたかどうかはわかりませんが、大学生になると「『感情の共有』が社会に与える影響」に関心を持つようになり、戦争や全体主義について勉強しました。「面白いと感じたものをシェアして広められた」というようなポジティブな感情の共有がある一方で、「あいつは敵だ」というネガティブな感情を共有することで、大衆を扇動できてしまう。「共有」の二面性にも気が付きました。

僕たちはちょうど、バブル崩壊とともに生まれた世代。なんとなく時代には「諦め感」が共有されていた気がします。どうしたら僕たちが育ち、生きていくこの時代と世代に、ポジティブな一体感を生み出すことができるのか。大学生ながらにそんなことを考えていました。

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森美術館と立体緑園都市の衝撃

大学時代のあるとき、森美術館をフラッと訪れたことがありました。

文学部に所属していたので美術についての教養は多少ありましたが、とりわけ現代アートはとっつきづらく、それほど関心を持っていなかった。森美術館を訪れたのも、展望台(東京シティビュー)目的でした。しかし、当時の展覧会「ゴー・ビトゥイーンズ展」では、それぞれのアーティストの積み重ねてきた思考の軌跡や歴史的背景、その帰結として表現された作品の解説が丁寧に紹介されており、頭の中で様々なことが繋がったことを覚えています。アーティストから、作品を通して「共有」を受けた感覚に近かった。あまりの衝撃に、その場で年パスを購入。以降は全ての展覧会を複数回訪れるようになり、すっかり現代アートのファンになりました。

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展示風景:「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」
森美術館(東京)2014年
撮影:阪野貴也
写真提供:森美術館

そして、森美術館の衝撃冷めやらぬまま迎えた就職活動で、初めて会社としての「森ビル」に出会います。聞くに、都心の高層ビルの最上層に森美術館が置かれているのは、どうやら理由があるらしい。立体緑園都市という手法を用いて、「文化都心」という六本木ヒルズのコンセプトを体現していると。

この立体緑園都市という手法や、森ビルの都市づくりの考え方は、間違いなく世界にインパクトを与えることができると確信しました。確かに僕自身がそう感じたから。

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さらに、ミッションとして掲げられた「東京を世界一の都市に」という目標は、僕たちが共有してきた「諦め感」に打ち勝ち、ワクワクに満ちた未来や一体感をつくることにも繋がるはずだとも考えました。建築や不動産の知識は全くありませんでしたが、森ビルに飛び込むことを決意した瞬間です。

デジタルで街の人をつないでいく

入社後2つ目の部署として、タウンマネジメント事業部に異動しました。業務の幅が広い部署ですが、当初僕が担当していたのはヒルズのPR業務でした。

その傍ら、同じ部署でヒルズの街を使った実証実験を企画している先輩がいた。あるときその先輩から、「ヒルズネットワーク」という企画の構想を聞かされました。

ヒルズには、オフィスワーカーや居住者、商業施設の顧客やイベントに遊びに来た人、美術館を訪れる人など、非常に多様なお客様がいらっしゃいます。それぞれの人が実現したい「ヒルズライフ」を1つのIDを通して街側が汲み取り、1人1人に適切なサービスや情報を提供するという構想です。

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お客様が「ヒルズ」に求めるものを提供するためには間違いなく必要な構想だ、と直感的に思いました。それからその先輩の仕事を少しずつ手伝うようになり、いつしかプロジェクトのコアメンバーの1人となった。

ワクワクの入り口としての「ヒルズアプリ」

程なくして、部署内に「ヒルズネットワーク推進グループ」が立ち上がりました。ミーティングでは、知らない専門用語が無数に飛び交う。その度にChromeで新しいタブを開き、その単語を調べる。しかしよく見ると既に一度調べた形跡がある。そんな毎日でした。

限られたメンバーでスタートしましたが、プロジェクトの進行に伴って徐々に人も増えていき、僕は主として「ヒルズアプリ」の体験設計を担うように。

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当然アプリ開発に携わったことなど一度もないですし、アプリはプロジェクトの中でも、まさにお客様の目に触れる重要な部分。大変なことが多い一方で、お客様がワクワクする体験とは、誰かに「共有」したくなるようなアプリとは。それを考えていくことは、楽しい側面もありました。

だからこそ、中途半端なものは提供したくない。こだわり抜いて、自分たちが「これだ」と思えるものを使ってもらいたい。システム的な制限とにらめっこしながら、現在も日々改善を続けています。

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いつまでもワクワクする未来を見せる街でありたい

森ビルは「都市を創り、都市を育む」という理念を掲げていますが、これはデジタルでも同じです。アプリの開発も街づくりの一部だと思っていますし、物理的な街もアプリも、完成してからがはじまり。これまで六本木ヒルズのような街を丁寧に育んできた森ビルだからこそ、アプリのバグ修正や機能改善、お客様のフィードバック対応などにも、当然のように力をいれています。

さらに言えば、アプリは「ヒルズネットワーク」構想の最初のフェーズにすぎない。いずれ更なる技術の発展や発想の転換で、アプリという形にこだわらなくてももっと快適にサービスを提供できる日が訪れるかもしれない。目先の形にこだわらない広い視野を持ちながら、2023 年の「虎ノ門・麻布台プロジェクト」や「虎ノ門ヒルズエリアプロジェクト」の竣工に向けて、「ヒルズネットワーク」を育て上げていきたい。

iPhoneに衝撃を受けた自分が、都市づくりの会社でアプリをつくっていることには不思議な因果を感じます。いままで受けてきた衝撃や、いつまでもワクワクしていたいという感情に、素直に生きてきた結果なのかもしれません。

今度は僕が、ヒルズという街を通して誰かにワクワクする未来を提供したい。できることなら街の皆様とその未来を共有したい。そんなことを考えながらまずは目の前の仕事に取り組んでいます。

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山本 純也|Junya Yamamoto
2016年入社。財務部を経て現在タウンマネジメント事業部ヒルズネットワーク推進グループにて「ヒルズアプリ」の体験設計や「ヒルズネットワーク」の企画構想を担当。幼少期から東京ヤクルトスワローズの大ファン。