誰もが無理なく環境問題に触れられる「環境」をつくる
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誰もが無理なく環境問題に触れられる「環境」をつくる

環境問題と一言で言っても、脱炭素や再生可能エネルギー、資源循環、都市と自然の共生など、様々な問題が複雑に絡み合っている。地球上のすべての人に関わる問題だからこそ、簡単に解決することはできない。

都市の面白さは、その時代の「新しい挑戦」が積み重ねられていること。そう語る村田麻利子さんは、この難解な環境問題に対してまさに「新しい挑戦」を仕掛けています。

誰もが「自分に出来る範囲で」環境問題について行動できるような仕組みづくりに注力する村田さんの、色濃い原体験や強い使命感に迫ります。

都市と自然、 新旧が共存する街 プラハ

5才になる頃まで、チェコのプラハという小さな街に住んでいました。小高い丘にそびえたつプラハ城、そのふもとを流れるモルダウ川、旧市街の石畳。バロック建築もあればゴシック建築もある。城の裏側には広大な緑の丘が広がっていて、私は近所のおじさんとよくそこで遊んでいました。凧あげをしたり、谷を降りたら鹿がいたり、お庭では野生のハリネズミと遊んだり。街に出ると広場では市場が開かれている。プラハは、こんなにも色んな要素が混在しているのに、細部までつくりこまれた美しい街なんです。遥か昔の記憶ですが、私の原風景はプラハにあるのかもしれません。

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大震災後の日本と、街をつくるという仕事

だからこそ、日本に戻ってきたときの衝撃は今でも忘れられません。帰国したのは、1995年の阪神淡路大震災の次の日だったんです。テレビなどで見る映像では建物たちが壊れ、長く伸びた高速道路が割れている。豊かな情景が広がるプラハとのギャップ。日本の街はどうしてこんなに殺風景なんだろう、と母に話すと「じゃああなたが建築家になって、素敵な街をつくればいいじゃない」と。

プラハと日本のギャップ、そして母の何気ない一言をきっかけに、私は都市や建築に興味を持つようになりました。大学のゼミでは都市史を専攻し、イタリアの斜面都市や、東京の街の変遷について学びました。

実際にフィールドワークを通じて昔ながらの区画が残っている場所を歩いてみると、びっくりするくらい東京の街の見え方が変わりました。江戸時代から残っている道路もあれば、その時代の最先端の建築物にとって変わっている場所もある。江戸時代、岸の火事が燃え広がらないように開かれた橋のたもとには仮設の芝居小屋ができて、人が集まってくる。それが今の銀座だったり。東京って面白い。都市の複雑さに惹かれ、そう思うようになりました。

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歴史を学ぶことで、昔のものを遺すことの重要性を理解しましたが、一方でその時代の「新しい挑戦」の積み重なりこそが、都市の面白い要素だとも感じました。自分が働くことを考えると、自分もその挑戦者になる方が楽しそうだと思った。

その想いに気づいてからは、はやく最先端の街づくりの仕事に携わりたくて仕方がなくなっていました。都市はどんどん変わっていく。大学院に進学するという選択肢もありましたが、いちはやく自分自身が都市をつくる仕事に携わりたい気持ちが強く、森ビルに入社することにしました。

世界の共通言語としての環境

入社して2つ目の部署では、サービスアパートメントの営業に携わりました。森ビルは分譲住宅と賃貸住宅の両方の物件を扱っていますが、短期での入居も多いサービスアパートメントでは、その分多くの、しかも世界中からの居住者の方と関わることができました。

このとき、お客様との対話を通して、環境や緑というものは、世界の共通言語であることに気が付きました。アジアの方もヨーロッパの方も、アークヒルズや六本木ヒルズレジデンスのベランダから見える緑を気に入ってくれました。日本のことを学ぼうとするお客様に、この街で暮らすことで参加できるコミュニティのこと、ライフスタイルのこと、そしてその基盤になる緑や自然のことをお話ししていました。

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自然や環境と都市や建築の共存ということについて、明確に関心を持ち始めたのは、この頃だったと思います。今思えばプラハは、私にとって都市と自然がちょうどよく混ざり合っている街だったんだと思います。そして森ビルは私が入社する何年も前から都市づくりの軸に「環境・緑」を置いていた。建築を学んでいたこともあり、ランドスケープデザインの視点から、都市と自然が共生する空間の設計に携わってみたいと思っていました。

ワンウェイプラスチック削減チャレンジという「新しい挑戦」

そんななか、今から3年前、環境推進部に異動になりました。全社の環境の取り組みを司るこのチームで、私はいくつもの「新しい挑戦」の機会を得ることになります。

そのうちの1つが、ワンウェイプラスチック削減チャレンジです。ワンウェイプラスチックとは、一度だけ使用した後に廃棄することが想定されるプラスチック製品のことです。都市のなかに環境配慮を実装していくことに加えて、企業としての社会的責任を果たす意味でも、社内で使われているプラスチック製品を減らしていく必要があると考え、先輩とともにこのプロジェクトを立ち上げました。

実はこのプロジェクトの立ち上げ前に、ある失敗をしたんです。環境啓蒙をうたって軽食付きの映画祭を主催したことがあったのですが、その時、使い捨てプラスチックのカトラリーで食事を提供してしまったんです。イベント自体は100人程の集客ができて、満足してくださった方も多かったのですが、中には拍子抜けだなと感じた参加者の方もやっぱりいらして。それからは、必ず自分が参加者ならきちんと納得できるか?と自問自答するようになりました。いい教訓になっています。

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昨今ではSDGsやESGという概念が社会にも浸透し、その意義も少しずつ理解されてきましたが、いきなり全ての使い捨てプラスチックを廃止することは当然難しい。ただ廃止するだけでは、逆に輸送やロスが増えるなど別の部分で悪影響をあたえるものもあります。環境や緑は世界の共通言語であるが故に、会社や社会のあらゆる要素と一体になっているので、実情は1つのプラスチック包装を廃止するだけでも調整しなければならないことだらけです。

それでも私は、今やらなければならないと思った。趣味のヨットで訪れる、美しい海。仕事でもよく訪れる、この「アークヒルズ 仙石山森タワー」のこげらの庭の生き物たち。今できることをサボってやらなければ、いつかなくなってしまうのかもしれない。街づくりという人々の暮らしの基盤を支える仕事をしている私だからからこそ、森ビルだからこそ、やるべきだと感じたんです。まだ進捗中のプロジェクトですが、私にとっては大きな「新しい挑戦」です。

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「自分にできること」をやればいいんだ、という「環境」を整える

さらに、森ビル社内だけでなく、森ビルがつくる街に暮らすあらゆる人々が、環境や緑に配慮した取り組みに挑戦できるような設備や施設をつくることもまた、私たちの使命だと思っています。例えば、街中に新鮮な水を汲むことができるウォーターサーバーがいくつかあれば、捨てられるペットボトルの数が減らせるかもしれない。都市のなかで水を汲むという新しい体験は、思わぬ出会いやコミュニケーションを創発することにもつながるかもしれない。

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一方で、こうした環境への取り組みを、街に暮らす人々全て押し付けることはできないと思うんです。人には人それぞれのライフスタイルがある。だからこそ街は複雑で面白い。各々がその時したいこと、できることをやればいいと思うんです。私たちの役割は、これまでと同じ行動をとったとしても環境負荷が少なくなるような仕掛けを街の中に用意しておくことや、もっとやりたい・もっとできるという人に対して、さらに環境負荷の少ない選択肢を増やしておくこと。あらゆる人が自分にあった選択肢を選ぶ、その「環境」自体をつくりだすことだと考えています。

未来の「全世代」へ

先日の「ヒルズ街育プロジェクト」では、子供たちの環境への関心の高まりを実感しました。今の新入社員は大学で当たり前のようにSDGsを学んでいる。学ぶだけでなく、買い物などの日々の生活の場面でも意識して行動したり、何かに気づいた体験がある。これからの時代を担っていく彼らも、巻き込んでいきたいです。

さらに言えば、年配の方々も含め「全世代」で、それぞれのライフスタイルに合った環境への取り組みが実現されているような街をつくり、育んでいきたい。「建築家にはならなかったけど、誰もが素敵だと感じるような都市づくりに、私は貢献しているよ」 母に、プラハでお世話になった人達に、そんな風に胸を張れる日を夢見ているのかもしれません。

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1つの街から世界へと、カッコいいライフスタイルを発信する

2023年に竣工する「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の2つの柱は、「グリーン」と「ウェルネス」。都市は大量消費の象徴とされがちで、今後は世界中で都市の居住人口が増えていくとされています。このプロジェクトでは「環境に配慮できる余裕のあるライフスタイル」を都心で実現することで「環境のことを考えるってカッコイイ、生活の中で実際に行動できること、これが本当の贅沢なんだ」という文化を発信していきたい。この文化に共感してくれる人をどんどん増やし、環境問題の解決に少しでも貢献していくことが、私の、私たちの使命だと思うんです。

先日「虎ノ門・麻布台プロジェクト」と「虎ノ門ヒルズエリアプロジェクト」において、環境認証の「LEED ND」と「WELL」の予備認証を取得しました。ここに至るまでには、全社一丸となって数々の「新しい挑戦」を積み上げていく必要がありました。気が付けば、自分がその時代の「新しい挑戦」の積み重なりを作る側に立っていた。都市づくりって面白い。いま改めてそう思います。

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村田 麻利子|Mariko Murata
2012年入社。建物環境開発事業部、住宅事業部サービスアパートメント担当を経て、現在は環境推進部とパークマネジメント推進部を兼務。好きな植物は大きな木、好きな生物はエナガという鳥(アークヒルズに時々来る)、嫌いなプラスチック製品はテイクアウト用のカトラリー。

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