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共感し、共感され。人との関わりが「ウェルネス」な街をつくる

「働く」「住む」「遊ぶ」「憩う」…様々な人の営みが重なり合う、そんな街。新型コロナウイルスの流行をきっかけに生活様式は変化を迫られ、健康や医療という人の営みの土台に再び注目が集まっています。

2023年に竣工する「虎ノ門・麻布台プロジェクト」で掲げる2本の柱の1つが「ウェルネス」です。平野万紀子さんは、このプロジェクトを通して『「ウェルネス」な街の在り方とは』という問いに挑戦している。

これまでのキャリアで様々な「共感」を経験してきた平野さんに、あらゆる人が心身ともに健康で豊かに暮らせる街づくりにかける想いについて伺います。

人との関わりの輪を広げたアメリカンフットボール

大学時代は、体育会アメリカンフットボール部に学生トレーナーとして所属していました。トレーナーは選手の怪我の応急処置をしたり、テーピングを巻いたり、怪我の多いアメフトというスポーツでは欠かせない存在。女子高で3年間を過ごした私は友人の誘いでアメフト部に入部したのですが、そこには筋骨隆々で見た目も怖そうな男性たち、総勢200人近くが毎日身体をぶつけ合う、見たことのない景色が広がっていました。

こんな人たちとどうやって会話をしたら…最初はポツンとフィールドの端っこに立って練習を見ているだけでした。数ヶ月のテーピングの講習を終えるといざ実践。しかし、習いたての初心者に自分の怪我を任せられるかと、私にテーピングを頼む選手は1人もいませんでした。でも、最初は同じ1年生の数名から、次は2年生、毎日同じことを繰り返すなかで、徐々に私を信頼してテーピングを頼む人が増えていったんです。

やっていくうちに分かったのは、テーピングなどの技術そのもの以上に、テーピングをしている最中の数分間の会話が大事だということ。朝ごはんは何を食べたか、体の調子はどうかなど、毎日の会話によってお互いの信頼を少しずつ築いていく。人によって話す内容や距離感を変えたり、日々工夫をしながら人の輪が広がっていくことが何より面白かったです。

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街づくりに欠かせない「共感」の輪

人との関わりが広がっていくことが楽しくなってきた頃、その集合としての街づくりに興味を持ちました。街をつくるという仕事は、そこで暮らしたり働く人の営みを変化させたり、新しいライフスタイルを生み出すことができると思っています。街はあらゆる人の活動の土台になる。森ビルに入社したのは、そんな土台を作りたい、人々の暮らしに影響を与えたいと思ったからでした。

入社後に最初に配属された財務部では、現在建設中の「虎ノ門ヒルズエリアプロジェクト」や「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の開発資金を金融機関から調達する仕事に携わりました。「どうやら街づくりとは関係ない部門に来てしまった…」と最初はやや落胆しましたが、目の前の業務に取り組むうちに、金融機関や投資家に対して森ビルがどんな街を作るのか、その想いやビジョンを伝える大切さを知りました。

投資家の方々にも街づくりのパートナーになってもらうため、森ビルの街づくりに共感してもらう必要がある。共感を得て輪を広げる、それはあらゆる人が関わる街づくりの仕事において最も大切なことだという教訓を得ました。

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周囲の想いをくみ取って形にする、自分なりのコミュニケーションとは

2年間を財務部で過ごした後、もっと森ビル全体のことを知りたい、あらゆる事業のことを知りたいと思い、経営企画部に異動しました。森ビルの街づくりはこれからどう発展していくべきか、そのための組織や人材はどうあるべきか、本当に色々なことを考えました。そのなかで、ベンチャー企業やスタートアップ、VCなど新たな世界との出会いもありました。

自らの手で未来を変えたい・作りたいと考えている起業家や彼らを支援する投資家の皆さんは、自分のやりたいことややるべきことに対する強い想いを持っていて、行動力や説得力もあるパワフルな人ばかり。

対して、私は未来の街づくりや企業のあり方を考えながら、小さなことでも形にするのが難しくて、自分に何が出来るか悩む日々を過ごしていました。その間にも社内では、いろいろなパートナーとのプロジェクトが動いていて、その中心には、社内外のあらゆる人を巻き込んでプロジェクトを進めていく先輩社員達の姿が。

ある先輩社員が新たな施設を立ち上げる企画を進めていた時のことです。最初は社内でも「なぜ森ビルがそれをやるのか?本当に上手くいくのか?」といった疑問の声がありました。でもその先輩は、経営的な観点での検証を詰めていくのはもちろん、このプロジェクトが森ビルにとってどんな意義があるのか、東京という都市にどんな価値をもたらすのか、強い想いで説得をして協力者を増やしていきました。

そんな想いを共有されると、協力する側もワクワクしていくんです。新しいことに挑戦するにはハードルがあるのは当たり前。いかに自分やパートナーの想いに共感をしてもらうか、それがファーストステップだと改めて学びました。

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そうはいっても、共感を得るのは簡単なことではありません。人によってコミュニケーションの仕方を変えたり、日常的に信頼関係を築いておくのも大切。一朝一夕にできることではないからこそ、私もそういう仕事に挑戦したいと思うようになりました。

私自身は「こういう街を作りたい」といった新しい発想を持っている人ではなく、リーダーシップが強いタイプでもないと思います。でも人と話すことや何かを説明することはそんなに苦手ではないとも感じています。周りの人の想いをくみ取り、それを実際の街に落とし込むために考えて、また人に伝えて少しずつ形にしていく――そんな自分なりのやり方を見出していきたいなと思っています。

未来の予防医療・ウェルネスを切り拓く

2019年、「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の計画が発表されました。その2本の柱は「グリーン」と「ウェルネス」。発表から間もなく「ウェルネス推進部」が新設され、私はそこに異動になりました。新しいプロジェクトの一翼を担うこの部署で、新しい街の在り方を考えながら目下取り組んでいるのが、慶應義塾大学との共同プロジェクトです。

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私が異動した時には、既に慶應義塾大学病院の予防医療センターの移転に関する協議が始まっている段階でした。日本の医学をリードしてきたアカデミアと都市づくりをする民間企業、これまで交わってこなかった相手とそれぞれの立場や考え方を互いに理解するまでそれなりの時間がかかりました。

ただ、このプロジェクトを、未来の予防医療・ウェルネスを切り拓いていく、東京ひいては日本にとって意義のあるプロジェクトにしようという想いは一致していました。そして、予防医療センターの移転と共同研究という二本柱で、虎ノ門・麻布台を舞台にした慶應義塾大学との共同プロジェクトは今年の4月から具体的に動き出しました。

共同研究は、ヒルズという実際の街を舞台に、そこに暮らし、働く多様な人々の健康課題を把握し、予防医療・ウェルネスに関連した新たな技術やサービスを開発、社会実装することを目指しています。一人一人の健康課題にあわせた予防医療を提供する、そのためのデータ技術に関する研究は1つのテーマです。

例えば、私たちの「心」の健康度合い(ストレス)を生体的な指標などを用いて測定する研究があります。「心」の健康度合いを見える化できれば、メンタルヘルスの改善や日々のパフォーマンスの向上に向けて、一人一人が適切な行動を取ったり、街の施設や環境から個人にアプローチする方法も見えてくるかもしれません。そこで生まれた研究成果を街に実装できれば、ヒルズという街が人々の「心」の健康を支える新しいモデルになるのではないか。そんなことを想像しています。

「ウェルネス」を合言葉に、多くの企業や人を巻き込むために

この共同研究プロジェクトを、未来の予防医療・ウェルネスを街全体で開拓していく活動に発展させていきたいです。健康寿命の延伸は大きな社会課題ですが、単に病気がないだけでなく、人との繋がりを通じた心の充実や、持続可能な社会への貢献というのも「ウェルネス」という大きなテーマの重要な部分だと思っています。新型コロナウィルスの発生によりあらゆる変化を経験した私たちは、その重要性を身をもって感じているはず。

この共同研究プロジェクトは、未来の世代のためにヒルズで暮らす人、働く人、入居企業や店舗など、あらゆる人たちが協力しあうことで、社会により大きくポジティブなインパクトを与えられると思っています。街をフィールドにしたデータの活用という観点でも、利便性向上など一人一人に対するメリットの提供だけでなく、社会全体に対する意義や価値を示していくことで、より多くの人の協力が得られるかもしれない。

そのためには、やっぱり「共感」が大事なんだと思います。こんな未来にしたいという想いや価値観をお互いに共有し、共感する。それが基になって、虎ノ門・麻布台プロジェクトの「ウェルネス」活動の輪が拡がっていくと信じています。

人や企業とともに発展する「ウェルネス」な街を目指して

私自身は仕事を通じていろんな人に出会い、それぞれの想いに触れることで、この仕事の面白さを感じてきました。自分一人で実現できることは限られているので、周りの想いを汲み取り、自分の想いを人に伝え、共感の輪を少しずつ広げていくことで、大きなビジョンの実現に向けて歩んでいきたいです。

「虎ノ門・麻布台プロジェクト」は、森ビルがこれまでのヒルズで培ったすべてを注ぎ込んだ「ヒルズの未来形」と謳っていますが、出来上がったものが完成形ではない。様々な想いを持った人や企業がこの街で出会い、共感し、みんなで「ウェルネス」を進化させていく。そうやって未来に向けて、人とともに成長していく街にしたいです。

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平野 万紀子|Makiko Hirano
2015年入社。財務部、経営企画部を経て、現在は営業本部ウェルネス推進部にて「虎ノ門・麻布台プロジェクト」での慶應義塾大学との共同プロジェクトを推進している。おすすめの「ウェルネス」は筋トレです。身体の変化が心のポジティブな変化に繋がることを実感します。