日常も特別も。タウンマネジメントでワクワクの瞬間を生み出したい!
いつもワクワクさせてくれるから、気づけばあの街に通っている。一度だけでなく何度も訪れたくなる街には、街づくりに積極的に取り組む「仕掛け人」がいるのかもしれません。ディベロッパーが行う「タウンマネジメント」は「街を育む」仕事です。今回お話を伺う玄葉芽依さんも、この仕事を通じて、地域の人々との日々のコミュニケーションから、月ごと、年ごとのイベントの企画や運営まで、「街を育む」さまざまな側面に携わるひとりです。
「暮らす人、働く人、遊びに訪れる人に、街や人と関わることの価値を感じてもらいたい」と語る玄葉さん。お話を伺うなかで、街や人との関係から生まれる可能性が見えてきました。
非日常を通して、人の輪は自然と広がっていく
子どもの頃からお祭りが大好きでした。一番昔の記憶は、祖父母が住む福島県で毎年開催されていた、町内会の夏祭り。当日に向けて、コミュニティセンターでお囃子の太鼓を練習したり、屋台の準備を手伝ったりして。小さな町が夏になるといつもと違う空気感を纏い、非日常のワクワク感を味わえることが毎年楽しみでした。
高校生になり、軽音楽部でバンド活動をするようになると、自分でもイベントを企画するようになりました。学園祭などの校内で完結するイベントに参加して内輪でワイワイと楽しむだけでなく、音楽を通してもっと輪を広げていけたらいいなと思ったからです。小学校の頃の同級生など、友人伝いでいろんな学校の軽音楽部の人に声をかけ、ライブハウスで複数のバンドが共演する企画ライブを開催しました。
当時は特に何かコンセプトを考えていたわけではありませんでしたが、音楽の力はすごくて。参加者もお客さんも、初対面同士であっても、自然と仲良くなることができるんです。私もいい仲間に出会うことができ、今でも親しく交流しています。ちょっとしたチャレンジと新鮮さを感じられる場づくりを介して、たくさんの人と人をつなげ、コミュニティの輪をゆるやかに広げていくことができた感覚がありました。
地道な活動から、みんなの「楽しみ」を生み出す
森ビルに入社して3年目にタウンマネジメント事業部に異動し、六本木ヒルズの運営を担当することになりました。タウンマネジメントというと、このあとで紹介する、「Hills Breakfast」やクリスマスイベントなど、六本木ヒルズを舞台に開催する煌びやかなイベントの企画・運営を想像する方も多いかもしれません。
しかし、実はそれだけではなく、日常的な自治会との関わりもとても大事な仕事のひとつです。自治会とは、六本木ヒルズのレジデンスにお住まいの方をはじめ、商業店舗や各施設、企業にお勤めの方など、六本木ヒルズに住む人、働く人が会員のコミュニティです。自治会活動では「安全・安心活動」「コミュニティ活動」「地域貢献活動」の3本柱を主軸に、会員同士が常にコミュニケーションを図りながら、六本木ヒルズを含めた六本木・麻布エリアの街づくりを行っています。
このような自治会活動を円滑に進められるよう、私も事務局の一員として運営をサポートしています。また年度ごとに1つの国と継続して交流を行う「異文化交流プログラム」も昨年から始まり、昨年はドイツ、今年はフランスをテーマに、大使館や文化センター、観光局などにご協力を頂きながら、各国の魅力を「学ぶ」トークイベントや、文化を「体験」するイベントを開催し、更なる自治会活動の活性化やファミリー層や外国人などを取り込み、参加者の多様化を図っています。
学生時代、六本木という街には「自分では到底手が届かないほどの高級志向を持つ人たちが集まる場所」というイメージがあったのですが、自治会と関わるようになったことでそのイメージがガラリと変わりました。この街には、たくさんの方々が地元愛を持ち、支えあう空気感がある。幼少期に祖父母の住んでいた町で感じたような、心の拠り所となるあたたかなコミュニティは、都会の真ん中でも存在しているのだと実感しています。
毎月1回のペースで朝に開催されている「Hills Breakfast」は、チームで意見を出し合って選定したさまざまなジャンルで活躍するゲストスピーカーの方に、想いやアイデアを発信いただく朝のトークイベントです。
2010年から続く恒例のイベントですが、時代のニーズを読み取り、常に新しいものを取り入れることの大切さも学んでいます。特に私が関わるようになったのはコロナ禍が始まってからのこと。決して「朝活に魅力を感じて人が集まる」という状況ではありませんでした。実際に当時は六本木ヒルズに通勤する方も減っていましたし、イベントに参加するさまざまなビジネスパーソンに出会える機会が減るので、登壇する方にとってもメリットが大きいとは言えません。どのようにすれば参加する意義を感じてもらえるのか考えていった結果、これまで登壇してくださった数百人の方々が参加できるコミュニティづくりという方向が見えてきました。
そして現在も試行錯誤しながら、登壇者限定のイベントも開催しています。実際に、サステナブルをテーマに事業を展開している人同士がつながり、その後コラボレーションが実現するといったケースも生まれています。さらに今後は、参加者同士のコミュニティづくりにも力を入れていきたいですね。
「ヒルズの代表」という責任感をもって
毎年クリスマスシーズンになると開催される「Roppongi Hills Christmas」では、ウェストウォークに設置されるクリスマスツリーと、大切な方へクリスマスカードを贈りメッセージを届けることができる「Wish a Wish」の企画を担当しています。ツリーは毎年デザイナーと一緒にデザインを考えていくのですが、想像もしないようなすてきなアイデアを出してくださり、「Wish a Wish」も参加してくださる方の喜ぶ姿が目に浮かんで、ワクワクする機会がたくさんあります。
しかし、楽しいことばかりではありません。毎年異なるデザイナーがこれまでにないデザインに挑戦する六本木ヒルズのクリスマスツリーづくりは、予期せぬことが起こる可能性も高く、多くのハードルがあります。私たちは最大限デザイナーが思い描く作品をつくる手助けをしたいという気持ちを持ちつつも、街としてどうあるべきかを伝えていく必要があります。特に「安全・安心」に対しての意識は非常に強く持ちながら、デザイナーや作品と向き合っています。
私自身まだ若手社員ですが、「ヒルズの代表」という自覚をしっかりと持ち、軸はブレさせないこと。そして「自分自身がどうしたいか」の意見を持ち、伝えること。そうした責任感や想いをデザイナーにも理解いただけると、双方が納得できる着地点を見つけることができます。
信頼関係を築き、いいものをつくるには、イエスマンでいてはダメだと改めて実感しました。
きっかけを創出し、街を進化させていく
今年の「Roppongi Hills Christmas 2022」では、冬の美しい煌めきをイメージした「Reflective tree」がウェストウォークに飾られています。直前まで実物がどうなるか想像もつきませんでしたが、完成したクリスマスツリーを眺めていると、「いろんなハードルをくぐり抜けて、ようやく形にすることができた」と達成感を感じます。そしてそのツリーを見て楽しむ人々の姿を見ることで、「いいものができた」という喜びが湧き上がってくるのです。
また、恒例の参加型イベント「Wish a Wish」も、今年は新たな挑戦をしています。その内容は、クリスマスカードと合わせて、音声メッセージも一年越しに贈ることができるというもの。期間中六本木ヒルズ内に出現するイベント専用の赤い電話ボックスに、ぜひメッセージを入れてみてください。
すべての土台となる人と人とのつながりや、そこから生まれるあたたかさは常に大切にしながら、変えるべきところを柔軟に変えていく。このように街をもっと進化させていこうとする想いは、街づくりに欠かせないものだと思います。
これまでは自分が仲介役になることで人と人がつながる喜びを感じていましたが、これからは自分単体ではなく、「ヒルズ」のコミュニティにもっと多くの人を巻き込み、偶発的に出会った人同士でどんどん輪を広げていってもらえたらと思っています。六本木ヒルズに行けば新しい人に出会うことができ、アイデアをもらえる。小さなことでも、コミュニティの土台づくりを進化させていきたいですね。