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なぜ社会人大学院に?森ビル社員が描く未来

都市を構成する無数の要素の中で、コミュニティはとても重要な存在です。

「さまざまなきっかけをつくることで、繋がりが育まれ、愛着がもてる街になるはず」。そう語るのは、入社6年目の伊藤有亮さん。

まちづくりに興味を持ち、コミュニティ活動に関わるようになったきっかけや、現在取り組んでいる大学院での研究、これからのまちづくりにかける想いについて語られました。

伊藤 有亮|Yusuke Ito
2017年森ビル新卒入社。大学では社会学を専攻し、都市・地域政策のゼミでまちづくりを学ぶ。森ビル入社後は、経理部を経て2019年から都市政策企画室へ異動。まちづくりに関する制度の活用や政策提言、行政協議などを行う。2021年より業務と並行して社会人大学院へ入学。2022年4月より環境推進部を兼務。大学院で学びながら食品ロス削減に寄与するまちづくりの仕組みを模索している。

学生寮での経験が、まちづくりへの視野を広げた

私のまちづくりへの興味は、ささやかな出会いと行動の積み重ねによって深まっていきました。

最初の出会いは、中学2年生の頃。『東京・首都圏未来地図』という本をふと手に取ってみたんです。そこにはこれから予定されている都市開発を経た後の東京の街並みや地図が描かれていて、その壮大なビジョンや計画を目にして「東京っておもしろいな」と気づかされました。

一方で、街の未来だけでなく、過去にも興味を持つようになったのが、高校1年生の頃でした。きっかけは、NHKの番組「ブラタモリ」。たまたま見た第3回の「二子玉川」の回を観て、気づけばその内容に没頭している自分がいました。街路のひとつひとつに実は歴史の名残があり、それらを紐解いていくことで、昔の暮らしぶりが見えてくる。私は東京で生まれ育ち、東京についてなんとなく知ったつもりでいましたが、東京という街をより深く知っていきたいと感じました。

このように元々街に興味があったものの、高校時代や浪人生時代は目先の大学受験で手一杯で、将来のイメージがなかなか固まらずにいました。また、大学時代は、まさに自分自身を模索するような期間だったと思います。そこで大切にしたのが、フットワーク軽く色々な挑戦をすることでした。大学という環境であらゆることを自ら選択できるのが嬉しく、機会があればさまざまなことに取り組みました。そうした中でも、大学3年生から始めた国際学生寮の「レジデント・アシスタント」の仕事は、自分にとってまちづくりへの視野が広がる、特に重要な経験だったと思います。

きっかけは、「海外から来た留学生と交流する機会ってどこにあるのだろう?」という、ある日に抱いた素朴な疑問でした。そして「ここなら何かわかるかも」と、国際課の相談室に行ったところ、留学生が暮らす寮で住み込みの学生スタッフ(レジデント・アシスタント)として働くことを勧めていただき早速応募。採用が決まり、実家を出て新しい生活がスタートしました。

30人ほどいるレジデント・アシスタントの役割は、担当するフロアにいる20人程度の学生同士のコミュニティの醸成、さらに、700人ほどいる寮生全体のコミュニティを活性化させることでした。

寮には、国籍も、通う大学も異なる、さまざまな学生が暮らしています。「うまくコミュニケーションが取れるのだろうか」という不安もありました。でも、いざ始めてみると、好奇心やおもしろさの方が圧倒的に勝っていきました。

ある日寮生で行った花火大会
ちょっとお願いごとをしたり、ふとしたときに共通点が見つかったり、日常の会話からもいろいろな交流が生まれた。アシスタントというよりも一人の寮生として、にぎやかな寮生活を過ごすことができた

多様な価値観や考え方を持つ人が繋がり合うためには、スポーツや文化的な体験、大規模なパーティーや少人数の飲み会、旅行など、いくつものきっかけを用意し、出会いの場を創出する必要があります。難しい役回りでしたが、寮生同士を偶発的につなげ、会話を生み出していくうちに、徐々に関係性が網の目のように広がり、それが深まっていく様子を見ることができ、やりがいに繋がりました。

バックグラウンドの異なる寮生が多いと、アメ横や高尾山に魅力を感じる留学生もいれば、近所の焼き鳥屋に行くのが大好きな留学生、寮のある多摩エリアから終電でわざわざ六本木に遊びに行く留学生もいて、東京の魅力や愛着の感じ方も人それぞれ。自然と東京という街における人々の営みを俯瞰する視点を与えてもらっていました。

そして、偶然の出会いやコミュニケーションを通じて、街に魅力や愛着を感じたりしてもらえるような、ソフト面のまちづくりにも携わりたいという想いも、次第に膨らんでいきました。

学びと仕事を掛け合わせ、まちづくりへの理解を深めたい

大学を卒業後、森ビルに入社してからは、ハード面からソフト面まで、関わる人の多いまちづくりにおいては、「ゼネラリストの視野の広さ」と「スペシャリストの専門性の深さ」の両方を併せ持つことの大切さを実感するようになりました。

特に私の所属する都市政策企画室では、森ビルが目指す都市づくりのグランドデザインを実現していくことが求められます。そのため、カーボンニュートラルやDX、ウォーカブルなまちづくりなど、社会の潮流に広くアンテナを張り都市計画分野の知識を広げながら、個々のまちづくりの実例から深く学んでいく必要があります。

そこで上司や周囲の社員からの後押しもあり、2021年に「東大まちづくり大学院」という都市工学系の社会人大学院に入学しました。

平均年齢41歳・多彩な実務経験を持つ大学院の同期には、地域の町おこしを手掛ける人から、行政、福祉、IT、コンサル、印刷業、メタバース空間をテーマにまちづくりを考えている人までいて、発想の面白さや豊富な経験談には驚かされる日々です。私自身もそんな同期に励まされたり、業務や研究に関連する人をご紹介いただいたりと、日頃から大変お世話になっています。

昨年の秋からは、お互いの実務でのまちづくり活動を紹介する、学生発意の実地演習を同期と企画しています。それぞれのフィールドに足を運ぶことで、新たな繋がりや気づきが生まれ始めています。

まちづくり大学院の同期との実地演習

ここで私が研究しているテーマは「食品ロス」です。まちづくりにおいて環境分野の取り組みは、「都市と自然との共生」「脱炭素化」「資源循環」など様々なテーマがありますが、課題が多く解決が難しい「食品ロス」にこそチャレンジしたいと思い、深堀りして調査研究をしています。

レジデント・アシスタントをしていた頃は、食品ロスを減らすために、大規模なパーティーをしたら記録を残して次回のパーティーの仕入れの参考にし、余ったものがあれば持ち帰ったり、日常生活でもフロアメイト同士で分け合ったりと、それぞれが工夫をして過ごしていました。

こうした工夫は、数十人から数百人というスケールだから成り立つことなのかもしれません。しかし、需給予測技術の向上やシェアリングエコノミーの推進など変化・変革の状況も踏まえると、もう少し大きなスケールでも、「まちづくり」という視点から何かできることがあるのかもしれない。そうした着想から、食品ロスを削減する仕組みをどのように社会に実装すれば効果的なのか、研究を進めようと思っています。

まちづくりにも、人のつながりにも、ゴールはない

思い返せばこれまでも、偶発的な出会いから縁が繋がり、進むべき道も自然と決まっていったように思います。実は、森ビルとの出会いもそうでした。大学2年生の秋頃、生協のインターンシップコーナーへふらっと立ち寄った先に森ビルのブースがあり、説明を聞いたんです。「『東京を世界一の都市にする』って、おもしろそうな会社だったな」と思いながら帰りの電車に乗ろうとすると、先ほど話したばかりの担当の方とたまたま帰り道が一緒になり、話しながら帰ることになりました。

そんな縁もあり、まだ就活を考えるタイミングではありませんでしたが、森ビルのインターンシップに応募し、参加することになりました。当時の経験で特に印象的だったのが、都市と東京の未来を考えるための研究施設「森ビル アーバンラボ」を訪れて、東京を俯瞰する巨大な都市模型を見たことでした。その時の感動が、いま森ビルで働く原動力にもなっています。

現在は業務の中で、この都市模型をご案内したり、プレゼン内容の改修のお手伝いをしたりする立場にもなりました。業務を通じて、東京の未来を深く考える機会が常々あることは森ビルならではだと思います。

プライベートの楽しみも、六本木の街で
「趣味であるバドミントンは、生涯スポーツとしてどんな世代でも続けられるところも良さのひとつです。六本木ヒルズで働く大学時代の先輩とのランチをきっかけに、近くの公立中学校でバトミントンができることを知って、近隣の方々やワーカーの方々と一緒に毎週からだを動かしています」  

偶発的な出会いやきっかけがたくさん積み重なり、人との縁が深まっていくことは、街に対する愛着にもつながるはず。人のつながりにも、まちづくりにも、ゴールはありません。私自身が偶発的な出会いから縁が繋がり、チャンスをいただいてきたからこそ、今度は自分が得た知見をもとにまちづくりに関わる人々をつないでいき、東京に愛着を持ってもらえるような、よりよいまちづくりに貢献していきたいと思っています。

伊藤さんの「未来を創る必須アイテム」

『東京・首都圏未来地図 ’08最新版』
中学生の頃に購入して以来、ずっとお気に入りのムック本。読み返してみると、当時は東京駅も2階建てで、これから副都心線ができるという段階。当時のワクワクした思い出が蘇ります。


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